普段、あまりテレビを見ない私は、入院の時間を過ごすために本とスケッチブックを持参してきました。
窓からの景色や仕事で必要なデザインを描こうと思っていたのですが、普通病棟へ移ってから最初に描いたのは、手術中に見た夢の絵。
ICUにいる間もずっと、手術中に見た夢が何度も思い浮かんでいました。
青いうさぎです。
私が描いた絵がちょっとイラストっぽくなってしまいましたが、実際の夢はもっと色鮮やかで輝いていてきれいでした。
ほっぺたがとてもふっくらしたそのうさぎは、色こそ青く違うけれども、私が昔、10年以上一緒に暮らした「ティモシー」といううさぎだと感じました。実際に飼っていたティモシーは真っ白な体毛で耳と鼻と足先だけがグレーの真っ赤な瞳のうさぎでした。でも、手術中に現れたティモシーは、光るような青の綺麗な色の毛色でした。
恐らく手術中だと思うのですが、音がほんの短い間きこえました。たぶん、私の心電のピッピッピッという音でしょう。途中、それとはちがうピーピーという音と人がいる気配か会話の音。会話の内容まではよく聞き取れませんでした。
痛みや体の感覚等は全くありませんでしたが、ほんの短い間だけ、音だけが聞こえ「あぁ、私の手術中なのね」と思いました。
でも、体を無理に動かしてみようという気にはなりませんでした。
なぜなら、
手術が始まる前、もう眠っていた段階だと思うのですが、右手首に麻酔の針が中々入らなかったようで(術後見たら、9穴ありましたので)、小さく「あ、すみません」と言いながら針を抜入れなおされるのがわかり、そして、視覚でも見えてしまったので「大丈夫ですよ」と私が声を発すると「ショウキ!ショウキ!!」と慌てる声が聞こえ、突然、男性が私の顔の真上から両手でググッとマスクを物凄い力で抑え、体重をかけたので(恐らく、ショウキガスを深くもれずに吸わせるため)、私はその力に口周りがへこむのではないかとビックリして、驚きで慌てた呼吸をし、抑え込まれたマスクが息で真っ白になるのが見え、慌てて動かした手も抑えられましたが、その後、直ぐに麻酔が効きました。
そんなハプニングもあったので、術中、ピッピッという音が聞こえたときは、手足が動くかどうか試そうというよりも、動かないようにしようという気分だったので、おとなしくしていました。
その時、音が聞こえているのと同時に半分は、青いうさぎの夢を見ていました。
半分というのは変な言い方かもしれませんが、二台のテレビがあるような感じでした。
左の一台は、映像はよく見えないけれどもピッピッといったリアルな音が聞こえるもの。右の一台は、音はよく聞こえないけれども青いうさぎの映像が見えるもの。左右で、そんな感じでした。
夢の中の青いうさぎは右側で金色の笛のようなものをただ穏やかな表情で吹いていました。
笛は金色に輝いていて、棒状なのか、三角だったか、楕円だったか…でも、二本足で立って、笛を奏でていました。
私は恐らく、14時間という長い手術の途中のどこかで、手術中のリアルな音と夢を同時に見ていたような気がします。そのリアルな音はずっと聞こえていたわけではなく、しばらくすると、フェイドアウトするように音が遠くなっていき、深く暗く、黒くなりました。
その後聞こえたのは、先生?看護師さん?に声をかけられた時の声。そして、家族がやってきたの見て、手術が終わったことがわかりました。
私としては、深い全身麻酔の途中で目が覚めるなんて恐ろしいし、夢なんて見るはずがないと思っていたのですが、とにかく音はリアルだったので、手術中に聴覚だけ?が覚醒していたような気がします。
ネットで調べたら、全身麻酔の手術中に目が覚めてしまう「術中覚醒」の人が約500人に一人くらいの割合でいるそうです。うーん、結構な割合かも。私もそれだったのかな?たぶん。